平成元年生まれ。東京都出身。2013年よりシンガポールにて日本の地域産品の販路拡大や文化啓蒙を行うIPPIN PTE. LTD.にてマーケティングに従事。2014年にシンガポールで初めて開催された国際唎酒師試験に合格後、2017年には上位資格である日本酒学講師、2021年には酒匠に認定される。出版社アルクより『日本酒オタクのほろ酔い英語』を出版。好きな漫画は平尾アウリ先生の『推しが武道館いってくれたら死ぬ』(徳間書店)
国際唎酒師・藤代あゆみさんの経歴
はじめまして。本日はよろしくお願いいたします。まずは藤代さんの今日までの経歴をお伺いできますでしょうか。
よろしくお願いいたします。わたしは日本で生まれ育ち、大学では歌舞伎と文楽の研究をしていました。
― 伝統文化にも精通されているんですね!
祖母が日本舞踊家で、伯父が人形浄瑠璃(にんぎょうじょうるり)をやっていたので、小さい頃から伝統文化が身近な環境で育っていました。
大学でもその流れを受けて歌舞伎と文楽の研究をしていました。
― 卒業後はどんな道に進まれたんですか?
伝統文化とは無関係の中小企業に就職しました。
しかし、就職してからしばらくして突発性難聴になりまして、耳の三半規管が弱ってしまって、真っ直ぐ歩くのも難しい状況になりました。
入社した会社も1年未満で辞めて治療に専念しました。今では症状も治まって、仕事ができる状態にまで回復しました。
― 回復したあとはお仕事をされたんですか?
シンガポールで日本の良いものの販路開拓をしている会社に勤めることなってシンガポールに駐在しました。
そのシンガポールの会社では日本酒も扱っていました。
日本酒も飲めるカフェのような店舗をやっていて、輸出入と販売、イベント企画などを包括的におこなっていたんです。
でも日本酒を外国のお客様に説明できるほどの知識は持っていなかったんですよ。
さらに、英語、マレー語、中国語、タミル語など多くの言語が入り交じるシンガポールでは、「日本酒」と「焼酎」がメニューに書いてあると、勘違いされてしまうんですね。
― 勘違いというと?
日本酒は日本のお酒として理解してもらえますが、焼酎は「焼いたお酒」と思われて、熱燗だと思われてしまうことが多かったんです。
― それは日本人からすると意外ですね!
しかも私が駐在し始めた2013年頃は、日本酒を売り歩いていても「酒ってなに?」って言われてしまうレベルでした。
そんな中、お店の前を掃除していたら国際唎酒師の資格に関係している人が通りかかったんです。
「日本酒あるのー?」と聞かれて話しているうちに、「今度シンガポールで国際唎酒師の試験をやるんだけど、あなたも受けたら?」と言われたんです。
― それで試験を受けられたんですか?
はい、その試験で国際唎酒師に受かりました。
お店の前を掃除していただけなのに、まさかこんなに幅広く活動できることになるとは思いませんでした(笑)
― すごい話ですね。そのままシンガポールにいたんですか?
国際唎酒師の資格を取ってからは、シンガポールの店舗でワークショップを開いたり、やってくるお客様に合ったお酒を選んだりして、場数を踏んでいきました。コロナ禍で日本に帰国しました。
― その頃はどんな活動をされてましたか?
ちょうどWebメディアの記事をまとめて本として出版することになったり、日本酒と英語にまつわる連載が続いたので、幸いにも仕事は続けていられました。
今は、省庁関係から海外で日本酒を広める会などに参加しています。
― 活動の幅が広いですね。シンガポールにいた時期には他にどのような仕事をしていたんですか?
私はシンガポールにいた時期のほうが長いんですが、主に販売やセミナーを行なっていて、日本酒はシンガポールで販売すると、日本の3倍ぐらいの値段になります。
なかなか一般の人には買えなくて、シンガポールにやってきている駐在員や、海外のエキスパートたちに向けてセミナーをおこなうことが多かったです。
いわゆる富裕層向けの商品として日本酒を扱っていました。
具体的に国際唎酒師とは?
そもそも国際唎酒師というのはどのような資格なのか教えていただけますか?
国際唎酒師は二つの言葉に分けて考えられます。
「国際」と「唎酒師」の部分なんですが、まず利酒師のほうは日本酒のソムリエと言われます。
ソムリエというと、ボトルを隠してお酒の品種を当てる人というイメージがあるかもしれませんが、日本酒に関してはその能力は一切求められていないんです。
― お酒を当てないソムリエですか!
そうです。日本酒は、酒蔵さんがどんなお酒をつくりたいかによって味が決まっていきます。
たとえば、ワインの場合はその年の出来や気候、土地などによってある程度の傾向が決まっていくものです。
でも日本酒はお米を削ったり、蒸したり酒蔵さんが手を加えることで作り上げていきます。
「来年はこういう味わいにしたいね」とか、「辛口がいいな」など、同じお米を使っていても甘口にも辛口にも変えられる技術があるんですね。
― 酒蔵さんありきなんですね。
そこで唎酒師であるわたしたちは、何年の日本酒を当てるのではなくて、「こういう製法で作られているから味わい深いんだね」とか、「こんな食べ物に合うよね」っていうことを提案していく役割を担っています。
― 過程を理解して提案するというイメージですか?
そうですそうです!
なので原材料から始まり、歴史、日本酒の作り方、その土地の水(硬水や軟水など)によっても味が変わったりするんですね。
また、その土地にある食べ物に合うように作っている酒蔵さんが多いのが日本酒の特徴です。
これらのことを、知識をベースに、お酒の個性などを一般の方にわかりやすく説明するのが唎酒師の仕事です。
日本酒を知ってもらって楽しんでもらうのが仕事です。
― 「国際」の方はどういった意味があるんですか?
国際の部分はそのままで、英語で日本酒を伝える仕事ですね。
唎酒師だと「日本酒のことが分かる人」ですが、国際がつくと「日本語以外の言語で日本酒のことが分かるように説明できる人」ということになります。
― なるほどわかりやすい。
日本酒って漢字が多くて難しく感じられるんですが、唎酒師は日本酒を作る人と飲む人の間に立つ通訳のような存在なんです。
国際がつくと、さらに言語も通訳するっていう役割がありますね。
本当ざっくりと説明するなら「飲み会の幹事」みたいな役割ですね(笑)
― 飲み会の幹事(笑)
英語ができる飲み会の幹事って友達には説明しています。(笑)
国際唎酒師になるきっかけと必要な知識
さっきもお聞きしましたが、資格取得のきっかけは声をかけられたことだったんですか?
そうですね。でも背景として、海外に行ってみたら日本酒を知っている人があんまりいなかったというのと、自分も知識が豊富ではなかったというのがあります。
そういう意味では、声をかけられてすぐに国際唎酒師という資格に興味を持ったんだと思います。
― 今となれば、会社のお店で働いていたのも、国際唎酒師になるための準備だったのかもしれませんね。
国際唎酒師の資格は具体的にどんな知識が必要なんですか?
基礎的な知識の原料であるお米や水のことや、微生物のことも勉強します。
ほかには日本の歴史も勉強しますし、お酒についての法律も勉強します。
日本酒にはいろいろ法律があって、ラベルに「最高」って書いてはいけないなどのさまざまなルールがあるんです。
あとは実技としてテイスティングもおこないます。
ワイングラスのようなグラスを使って、お酒のカテゴリを当てるテストがあります。
流通や保管方法についても学んで、最終的にどういった提案がお客様にできるのかというテストがあります。
これをセールスプロモーションと呼んでいるんですが、夏の暑い日に熱燗は飲みませんよね?感覚的に理解していることを、細分化して理由を伝えることもセールスプロモーションなんです。
― それは実技なんですか?
セールスプロモーションは筆記です。言葉をチョイスして、長文で回答するんですが、これに合格すると、晴れて国際唎酒師になれます。
日本酒ができた歴史的背景
― ちなみに、日本酒はどういう背景で作られたものなんですか?
ワインの原料のブドウって甘いじゃないですか?それは糖分が含まれているので、そこから発酵が進んでお酒になるんです。
それに対してお米ってブドウみたいな甘さはない。
でもお米は、よく噛むと甘みが出てくるって感覚ありませんか?
これは唾液に含まれるアミラーゼという酵素が、デンプンを糖にしてくれるからなんです。
― 食べることで糖になるんですね
そこでできた糖を使って、日本酒っていうのは作られています。
「君の名は」という映画の中で、巫女の家系に生まれた主人公がお米を噛んで、それをそのまま放置しておくとお酒になるというシーンがあります。これはまさに日本酒を作ったことと同じ意味なんです。
― 神事や伝統文化とお酒も関わりがあるんですね。
稲作が入ってきた弥生時代に日本酒は作られたとされているんですが、本当に日本で最初に作られたお酒はワインだって言われています。
野ブドウが壺に落ちて、雨水が入り込んで発酵してワインができたとされているんです。つまり、日本最古のお酒はワインじゃないかと言われています。
― 日本酒は手を加えないと作れないということなんですね。
日本酒と海外の食事はペアリングできるのか?
日本酒と海外の食事って合うんですか?
お米って基本的にどんなものとでも合うんですね。
― どんなものとでもですか。
日本人が1番理解してくれるんですが、お米を食べるときにしょっぱいおかずや辛いおかず、お餅にすれば甘くしても食べるじゃないですか。
なので、日本酒も原材料の観点からすると何にでも合うんです。
― お米が何にでも合うように、日本酒も何にでも合うってことなんですね。
そうです。
チョコレートも一見合わなそうですけど、チョコ餅とかがあるので合わせられるんですよ。
― 確かにそう言われてみるとそうですね!
しかし、海外の人はお米をそうやって食べる習慣がないので理解してもらえないことが多いんです。アジア圏の人以外はお米の食べ方が違うんですよ。
― たとえばお米が主食ではない人たちに、日本酒のペアリングを説明するときはどうやっているんですか?
ヨーロッパの方は、お米をサラダとして食べる人達なんです。
味付け次第で何にでも合う「じゃがいも」を使って例える事が多いです。
その国の人の主食であるパンを使うと、意味合いが変わってしまうので、じゃがいもが最適なんですよ。
国際唎酒師がおすすめする失敗しないペアリング
では、実際にどういうペアリングをおすすめしていくんですか?
よくぞ聞いてくれました。まさにここが国際唎酒師の腕の見せ所なんです!
ペアリングにはいくつか考え方があって、まずは味が似ているもの同士を合わせる方法です。たとえば、甘いお酒なら甘い食事を合わせます。
他には、お野菜などの軽い食事には、軽めのお酒を合わせるんです。
もう一つは「補完」という考えもあります。
― 補完ですか?
補完っていうのは足りない味を足すっていう意味です。食べ物で例えるなら、唐揚げにレモンみたいなイメージですね。
あとはウォッシュ効果という考え方もあります。
― ウォッシュ効果。聞き慣れない言葉です。
魚が良い例なのですが、魚はほぼ100%生臭いんですね。
どんなにきれいに洗っても匂いは残るので、その匂いを日本酒で洗い流すというイメージですね。
洗い流すことで、食材の味がより深く、鮮明にわかるっていうペアリング方法です。
― 日本酒でより食材の味を引き立たせるということなんですね。
はい、そのとおりです。
あとは誰にでも簡単にできるペアリング方法っていうのもあります。
― 誰にでも簡単にできるペアリングですか。
食べ物の温度と日本酒の温度を合わせる方法がおすすめです。
お刺身には冷えた日本酒、常温の食べ物なら常温の日本酒、温かい食べ物なら温めた日本酒という合わせ方が簡単です。
― これはわかりやすいペアリングですね!
温かいおでんであれば、おでんの汁ぐらいの温度の日本酒を合わせると止まらなくなりますよね(笑)
― 想像しただけでもお酒を飲みたくなりました(笑)
国際唎酒師が語る日本酒の魅力
国際唎酒師になってから、日本酒に対する考え方などで変わったなと思うことがあれば教えて下さい。
一言でいえば、美味しさが細かくわかるようになったという点です。
たとえば白身魚のカルパッチョには白ワインって思ってた固定概念がなくなって、この日本酒が合うんじゃないか?と考えるようになりました。日本酒の知識が増えたので、このお酒がなんで美味しいのかがより深く、細かく理解できるようになりました。
あと、唎酒師あるあるなんですが、何でも日本酒に合わせたがるんですね。
― 全部日本酒に持っていってしまうんですか。
そうなんです。
でも、実際ワインのほうが合うっていう場合もあるわけで。そういうときにも、味を楽しめるようになりましたね。
― 日本酒の繊細さがキャッチできるようになって知識という引き出しも増えることで、食事が楽しくなるっていうことなんですね。
そうです。他にはカクテルにするっていう楽しみ方も覚えました。
― カクテル?日本酒ってそのまま飲むんじゃないんですか?
作り方を知ったからこそ、合う方法を知れたというのが正しいかもしれません。
たとえば、キリッと飲みたいのであれば氷をひとつ入れるだけでも味わいが変わりますし、少しだけソーダを入れると日本酒の香りを楽しめたりします。
あとは、レモン汁を2,3滴垂らすだけで、とたんに唐揚げに合う日本酒が出来上がります(笑)
― また唐揚げですね(笑)
日本酒には酸味っていう味が存在しているので、酸味に酸味を足すだけなので、おかしなことではないんです。
あと、日本酒を作るのに乳酸菌の力も借りているので、カルピスと日本酒の相性も良いんです。
大人のカクテルって感じでおすすめですよ。
外国人に冷酒と燗酒はなぜ驚かれるのか
― 海外の人に魅力を伝えるとき、冷えたお酒と温めたお酒についても説明されますか?
日本に住んでいるとなかなか気付かないんですが、お酒をそのまま温めて飲むのって世界的にも珍しいんです。たとえば、ホットワインとかってスパイスを入れたりして、味を加えるんですよね。
でも日本酒はそのまま温めて飲むので、海外の人には驚かれることが多いですね。
― では、海外の人に勧めるときは冷やして飲むことのほうが多いですか?
シンガポールは圧倒的に冷やして飲んでましたね。
飲みやすくなるというのが一番の理由ですが、悪くいえば香りを感じづらいということになります。
テキーラも常温より、冷えている方が飲みやすいのと同じですね。初めての人ほど、冷やしているお酒をおすすめすることが多いですね。
― 特に日本酒に慣れていない人には冷やしたほうが良いんですね。
じゃあ熱燗はマニアックな部類ですか?
慣れてきて、物足りなさを感じるようなら熱燗を勧めることもあります。でもかなりマニアックですし、海外の人からしたら「熱燗飲める」というのが自慢の一つになるレベルですね。
― 日本人から見ても熱燗は少しマニアックな気がしますね。
そうですね。私は日本酒ビギナーの人たちでも入り込みやすいように、プチ知識などを折り込みながら説明するようにしています。
― たとえばどんな話しをするんですか?
海外の人にもわかりやすいのは、酒税です。
酒税って室町時代からあるんです。海外の人は税金について敏感な人が多いので、「そんな昔からあるの?日本すごいね」なんて話をすると盛り上がりますね。
伝えることの難しさと外国人からみた日本酒
外国人に日本酒を伝える中で、難しいと感じることはありますか?
特に感じるのはクオリティと価格の部分ですね。
日本人は、作るのにかかったコストをそのまま価格に転化するんですが、味を考慮すると、もっと高くて良いのにというお酒はたくさんあります。
特に海外の日本酒を飲む人たちは、富裕層の人が多いので、高いお酒=良いお酒というイメージが定着し続けているんだと思います。
安くても価値があるんだということを、どうやって伝えていくかは課題ですね。
― 高いから良いお酒という認識を覆していきたいですね。
よく言われるのが純米大吟醸が1番良いお酒と言われるんですが、これなぜかというと、お米を1番多く削っているからなんですね。
1kgのお米からお酒を作ろうとすると、削る部分が多くなればなるほどお米の量が必要になります。
たった5%を削ろうとすると、2日ぐらいかかることもあるんですよ
― 2日もかかるんですか!?だから高くなるし、良いものだと思われるんですね。
ちなみに、どうやってお米を削るんですか?
お米を縦型の日本酒専用の精米機に入れて、石に当てながら削ります。設定を間違えればお米が割れてしまうので、非常に繊細な作業なんですよ。
それだけお酒になるのに手間がかかるので、純米吟醸は値段が高くなるんです。
「日本酒を選択肢の一つにしたい」国際唎酒師が語る今後の展望
SNSの普及で、さまざまな伝え方ができる時代になりましたけど、今後どのように活動していこうとお考えですか?
私の野望をお話しましょう笑
私は40歳になったら引退しようと考えています。
― えっ!引退ですか!?
そうです。第一線から退くという意味なんですが。
私のように活動している人って少なく、だいたい10人ぐらいしかいないんですね。でも、私一人にできることは限られている。
モテナスさんのような企業と協力しながら、日本酒を広める活動をしていますが、最近では国際唎酒師という資格についても発信するようにしています。
― 国際唎酒師を増やすっていうことですか?
私の知識とか経験も発信して知ってもらうことで、国際唎酒師が増えれば良いなと思っています。
若い人のほうが柔軟ですし、アンテナも非常に高い、外国人ともフラットに接することができるので、後進を育成していくことで日本酒をより広めていければと考えています。
― すでにそういう方はいるんですか?
以前モテナス日本さんでイベントにもう一人女性を連れていきましたが、彼女は私の知識や経験を吸収して、これから国際唎酒師として活躍しようと頑張っています!
― 国際唎酒師が増えることで、世界的に日本酒が広まればいいなということですね。
今後は海外の人たちの選択に日本酒が入るようにしたいと思っているんです。
「ビールかワイン」ではなくて、「ビールか日本酒、それともワイン?」って世界中でなっていけばいいなと思っています。
今は選択肢の一つになっていないですからね。正直、日本国内ですらも日本酒が選択肢になっていないことも多い現状だと感じています。
― 確かに、悪酔いするとかっていうイメージが定着しているかもしれませんね。
日本国内からも変えていけるように、発信していきたいです。
それに国際唎酒師はお酒が強くなくても取れる資格なんですよ。
― お酒弱くてもなれるんですか?
私がお酒強いので、よくないイメージを植え付けているかもしれませんが、ちょっと飲めれば取れる資格なんです。笑
試験のときもお酒を飲まずに、口に含んで出します。それに国際唎酒師にはお酒に弱い人のほうが多い傾向にあります。
沢山の量が飲めないので、一口を大切に飲む人が多くて、繊細に味をキャッチし易いんだと思います。
― 国際唎酒師はお酒が弱くてもなれるのは意外でしたね。
国際唎酒師を増やすうえで、ぜひ皆さんに知ってもらいたいことの一つです。
それと、英語ができる人が興味を持ちやすい資格の一つでもあります。国際唎酒師の試験は日本でも受験できますが、問題も解答も全て英語という、珍しい資格なんです。
― えっ!全部英語なんですか!?それは大変ですね。
英語の資格を取りたいという人の中には、海外の文化に興味を持つ人が多いんですが、海外の人は日本人には日本の文化を聞きたいはずなんです。
日本酒ではなくてもいいので、一つ日本の文化とか歴史に関わることを伝えられる様になってほしいですね。
― たしかにそうですね。外国人には海外の文化を聞きたいですもんね。
日本人にはそれができるのか?っていうのは、これから大切になっていくと思うんです。そういう点でも、国際唎酒師の資格は適しているんじゃないかと思います。
― 私もホテルで働いていたとき、歌舞伎や能について聞かれたことがありますけど、調べるまで知らないことばかりでした。
それを考えるとモテナス日本さんがやられているサービスは、外国人が日本でやりたいことをぎゅっと詰め合わせているので、とても素敵なサービスだなと感じています。
モテナス日本と国際唎酒師
以前、お仕事をご一緒させていただいた際に、外国人のお客様に向けてゲームをやられたと思うんですが、ゲームは大盛況でしたね。
あれは、お酒を当てるゲームでした笑
お酒を当てないと言っていた私がお酒を当てるゲームを主催しました笑
でもちょっと趣旨が違って、最初に1つのお酒を飲んだあと、3つ用意したお酒を飲み比べて、最初と一緒のお酒を当てるというゲームでした。
― 皆さん楽しんでらっしゃいましたね。
ゲームの前に、味や香りについて事前に説明もしていました。なんとなくゲーム参加者の皆さんが味に敏感になれるような下地を作ってからゲームに移ったので盛り上がりましたね。楽しく学ぶっていうのは万国共通かなと思います。
― 海外の方も日本酒に興味を持たれますよね。
突然ゲームを始めても、訳が分からないと思うんですよね。
人数にもよりますけど、代表者何名かが前に出てもらって、席に座っている人たちは席でお酒を当てるっていうことをすると、みんな盛り上がりますよね。
― 伝統文化とお酒を絡めて面白い事ができそうですよね。
そうですね!歌舞伎の演目によっては、お酒が出てくることがありますよね。
人情物の話ではお酒は欠かせないので、歌舞伎を見ながら「あの飲んでるお酒は今も飲めるんだよ」と説明すれば、海外の人は楽しんでくれるかもしれませんね。
― それは楽しそうですね!私も参加したいです。
あとは日本酒を扱う飲食店でも、外国人の対応に苦慮していると聞くので、日本酒学講師の資格を活かして外国人対応が多い飲食店に説明に行くっていうのも面白いなと思っています。
― 日本酒学講師は難しい資格なんですか?
唎酒師を持っていないと取れない資格なんですが、私の話しを1時間聞くだけで「日本酒ナビゲーター」になれます。
この1時間の話を、飲食店の皆さんに聞いてもらうだけで、ある程度の知識をつけられて日本酒ナビゲーターになれるので、お客さんの満足度を上げることもできます。
― そのまま外国人が日本酒を好きになってもらえたらうれしいですよね。
特に日本酒学講師で英語が話せるのが私以外にも少ししかいないので、貴重な存在なんですよね。
モテナス日本さんの取り組みは非常に面白いので、さまざまな切り口から日本酒を広めるためにも、日本文化を知ってもらう意味でも、色んなサービスを展開していきたいですね。
ぜひ、国際的な飲み会の幹事として、面白い企画をやっていきたいですね。
本日はお時間いただきありがとうございました。
編集後記 インタビューを終えて
フランス、イタリア、スペインなどはワインが有名な国で国民はそれを身近に感じているように思いますが、我々日本人はどうでしょうか?
今回藤代さんの話を伺って、日本人は日本酒を身近に感じずに、遠ざけているように感じました。
外国人から日本酒について問われたとき、その成り立ちや味の繊細さまで伝えられるようになれば、日本酒の輪が広がり、外国人の選択肢の一つに日本酒が入るかもしれません。
全員が日本酒の発信をするべきとは思いませんが、お酒と食事を楽しむためにも、日本酒について知識をつけておきたいなと感じます。
藤代さんは、日本酒のことを発信しながら、対面で海外のお客様を日本酒でモテナス活動をされています。我々モテナス日本でも海外のお客様に向けて、日本酒や日本の文化を理解してもらい、相互理解が深まれば良いなと考えています。
30代男性ライター。ホテルに16年間勤務し、旅行業界に携わる。旅行代理店やホテルでの仕事を通じて旅行に興味を持ち、よく旅行に行っています。好きな都市は仙台と博多です。旅を通じて得た知識や日本の魅力を丁寧に伝えていきます。