ユニークベニューという言葉をご存知でしょうか。
最近では、ユニークベニューを行い、活動をアピールする企業や自治体が増えています。
ユニークベニューの基本やその効果をきちんと把握して、参加者にサプライズを与えてみてはいかがでしょうか。
この記事ではユニークベニューの意味や、その効果、実例などを紹介しながら、ユニークベニューが実施できる具体的な施設を解説しています。
ユニークベニューを行ううえでの参考にしてみて下さい。
ユニークベニューとは
まずユニークベニューというのは英語で「特別な会場」という意味を持っています。
これは会議やレセプションなどを専用の会場ではなく、博物館や美術館、お城などの会場で行うことをいいます。特別な会場で行うことで、イベントの参加者にサプライズを演出することができる上、その街や文化、歴史を紹介することもできるのです。
具体的な例としては、城郭の広場で自治体の観光地誘致のレセプションを行ったり、能舞台を用いて、日本文化を体験するイベントなどがあります。
海外でユニークベニューは会議やレセプションを開催する際に、先駆けて取り入れられていますが、日本では十分な理解があるとは言えない状況です。
しかし、日本には歴史的建造物や文化遺産が数多く存在するため、これからその利用価値を見い出していく、まさに発展途上といえるでしょう。
このことから、文化庁でも「文化財をユニークベニューとして活用したイベントを積極的に実施する」というアクションプログラムを掲げて、この取り組みを推進しています。
ユニークベニューがもたらす効果
ユニークベニューを行うことで、どのような効果が期待できるでしょうか。
大きく分けて二つの効果があると考えられます。
・地域への経済効果
・知的満足や知名度の向上
地域への経済効果
ユニークベニューを行うことで、イベントの開催中や開催後にかけての経済効果が見込まれます。イベントやレセプションの開催中は会場の使用料やレセプションで出される料理、または遠方からの来訪者の宿泊費用などが、開催地で使われるため、その経済効果が発生します。
また、開催後はその場所に訪れた人が拡散、広めることで開催地を訪れる人が増える可能性もあります。ユニークベニューをきっかけに、オンラインで開催地の特産品を取り寄せるようなこともあるでしょう。
ユニークベニューは近視眼的に目の前の経済効果だけでなく、その後の効果まで波及するイベントになりうるのです。
知的満足や知名度の向上
ユニークベニューを行うことで、開催地の文化や歴史を深く掘り下げ、認知してもらうことができます。たとえば沖縄の鍾乳洞でアウトドアのイベントを行えば、その鍾乳洞がどのようにして出来上がったのか、その成り立ちを知ることができるうえ、「沖縄に鍾乳洞がある」というそもそもの認知に繋がります。
また、お城で行った場合は、築城した年やその背景、どのような人物が建てたのかを知ることができ、来訪者の知的満足につながります。
イベントが開催されることによって、開催地の知名度も向上します。大規模なものであればテレビなどのメディアで取り上げられる他、小規模でもSNSでの拡散も期待でき、今後のユニークベニュー開催や地域振興のための知名度は確実にアップするでしょう。
このほかにもユニークベニューを行うことで、その企業の活動がアピールできるなどさまざまな効果が期待されます。
ユニークベニューの例
ここからは実際のユニークベニューの実例を紹介していきます。
まず前提としてユニークベニューは、コンサートやショーなどの興行や販売を伴うイベント、不特定多数の人が参加するイベントは対象外な場合がほとんどです。
対象となるのは企業や団体のレセプションパーティー、記念式典や大会、会議や新製品発表の記者会見などを指します。具体例として二つのイベントを紹介します。
・東京タワーでのレセプション
・高松城趾玉藻公園「披雲閣」でのイベント
東京タワーでのレセプション
外資系企業のインセンティブイベントを、東京を代表する展望台、東京タワーで実施した例で、企業内の表彰式や立食パーティーが行われました。
地上150mにあるメインデッキで夜景を楽しみながらの立食パーティー。そののち、さらに上の250mにあるトップデッキで表彰式という流れでした。
両方の会場を使うことで、記憶に残る特別な体験を感じられるパーティーになります。また、あの東京タワーでイベントを実施したということで企業もイメージアップの効果も得られるでしょう。
高松城趾玉藻公園「披雲閣」でのイベント
香川県高松市にある国の重要文化財、高松城趾玉藻公園では「匠のおもてなし」と題したイベントを実施。地元瀬戸内の料理をジャズを聴きながら「五感」で味わう夏の夜を楽しむイベントでした。
高松市観光課が主催したイベントで、夏休みの初めに無料開放した公園には約5,000人が詰め掛けました。また、関係者や事前に申し込んだ人は公園内の「披雲閣で」食事ができ、高松の伝統工芸品の器で美味しい食事に舌鼓を打ちました。
イベント全体では県の内外から人が集まり、高松の観光促進につながった良い事例です。
東京エリアのユニークベニュー施設
ここからはユニークべニューを受け入れている施設を紹介していきます。まずは日本の首都である東京エリアから5つの施設を紹介。国際会議や多くの外国のお客様を受け入れてきた日本が誇る最大の国際都市です。
東京都はユニークベニューには積極的な動きを見せており、ユニークベニュー専用の支援窓口を設置して対応してくれます。気軽に相談できるのは嬉しいポイントですね。
東京国立博物館
東京上野にある東京国立博物館は明治5年に創立された、日本で最も古い博物館で、本館の建物は重要文化財に指定されています。日本を中心に、東洋諸国などの文化財が観覧でき、法隆寺宝物館でも展示物を見ながらのイベントを行うことが可能です。
展示物の関係で、食事や機材の持ち込みに制限はありますが、博物館で行われるイベントには多くの関心が集まるでしょう。
施設名称:東京国立博物館
所在地:〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9
公式サイト:https://www.tnm.jp/
浜離宮恩賜庭園
徳川将軍家とゆかりのある浜離宮恩賜庭園は、四季の移り変わりを感じられる自然と、ウォーターフロントの高層ビルが対比する、大都市東京ならではの空間を提供してくれます。
歴代の将軍が別邸を建てて「浜御殿」という名称で親しまれてきましたが、11代将軍家斉のときには、ほぼ現在の姿の庭園が完成して、昭和27年に国の特別名勝および、特別史跡にしていされています。この歴史ある庭園には茶室もあり、外国からのゲストを驚かせてくれるでしょう。和室でのパーティーののち、茶室で生花体験をするなど活用方法はさまざまです。日本らしい「和」のおもてなしができる施設といえるでしょう。
施設名称:浜離宮恩賜庭園
所在地:東京都中央区浜離宮庭園
公式サイト:https://www.tokyo-park.or.jp/park/format/index028.html
東京国際クルーズターミナル
東京港に2020年に誕生した東京国際クルーズターミナルは、船の科学館があった場所に建てられた東京の新しい玄関口です。レインボーブリッジをくぐれない大きさのクルーズ船に対応すべく2020年に開催予定だった東京での国際大会に向けて建設されました。
延べ床面積約19,000m2、4階建ての建物には会議室やVIPルームを備えており、イベントに応じて柔軟な形式での利用が可能です。過去には外資系ファッションブランドの新作発表会として使われたこともあり、その活用方法は無限です。
羽田空港からのアクセスもよく、近隣には宿泊施設も多いことから外国からのゲストを迎えるのに適した立地も魅力の一つです。
施設名称:東京国際クルーズターミナル
所在地:〒135-0064東京都江東区青海二丁目地先
公式サイト:https://www.tptc.co.jp/terminal/guide/cruise
乃木神社
東京赤坂にある乃木神社は、都心にありながら自然に囲まれた、静けさと穏やかさに満ちた神社です。明治期の軍人である乃木希典とその妻が住んでいた邸宅の隣にあり、天皇への夫妻の忠誠心に感激した国民の有志がこの地に建てたとされています。
神社に隣接する乃木会館では婚礼、宴会などが行え、境内・本殿を貸し切ってのイベントは日本の伝統を体験できる特別な機会を提供できるでしょう。
施設名称:乃木神社・乃木会館
所在地:〒107-0052 東京都港区赤坂8丁目11-27
公式サイト:https://nogijinja.or.jp/
鉄道博物館(埼玉)
東京ではありませんが、埼玉県にある国内最大級の規模を誇る、鉄道博物館でもユニークベニューを行うことができます。この施設はJR東日本創立20周年記念事業のメインプロジェクトとして開館した鉄道の歴史博物館です。
明治の鉄道開業時から新幹線まで、歴代の車両がずらっと並ぶ1階フロアは、電車好きでなくとも見応えのある展示です。これまでも周年行事や謝恩イベントなどの実績もあり、ケータリングを呼んで食事もできるなど、人気の会場です。
施設名称:鉄道博物館
所在地:〒330-0852 埼玉県さいたま市大宮区大成町3丁目47
公式サイト:https://www.railway-museum.jp/
大阪エリアのユニークベニュー施設
人口800万人を超える西日本の中心都市である大阪。都心部には高層ビルやオフィスが立ち並んでいますが、古来より日本の政治や経済、文化の中心地でもあります。
当時の神社仏閣など、歴史的建造物も多数残っている日本第2の都市でのユニークベニューはサプライズや新しい体験を提供してくれるでしょう。2025年には万博も開催されるため、これから大阪のユニークベニューは活発化していくことが考えられます。
そんな大阪エリアでのユニークベニュー対応施設を紹介していきます。
大阪城西の丸庭園
都心であることを忘れてしまうほど広大な大阪城西の丸庭園は、季節の植物が多く、つねに四季を感じさせてくれる庭園です。かつての太閤・秀吉の正室が住んだ屋敷があり、最も大阪城がきれいに見えるといわれる場所に、大阪迎賓館があります。
過去にはAPEC’95国際会議やG20大阪サミット夕食会の場として、名だたる首脳を迎えいれた実績を持つ正真正銘のユニークベニューです。その歴史や大阪城を眺めながらのレセプションやパーティーは特別感の演出にはうってつけでしょう。
施設名称:大阪城西の丸庭園・大阪迎賓館
所在地:〒540-0002 大阪府大阪市中央区大阪城2
公式サイト:https://www.osakacastle.jp/
大阪天満宮
日本三代祭りのひとつ「天神祭り」が行われる大阪天満宮では、境内に佇む天満宮会館で結婚式などを行うことができます。もちろん、レセプションやそれに係る会議や食事も可能です。天下の台所と呼ばれた大阪ならではの旬の食材を用いたこだわりのお料理も魅力の一つです。
本殿は天保14年に再建された歴史ある建物。歴史ある天満宮でのユニークベニューは記憶に残ることでしょう。
施設名称:大阪天満宮
所在地:〒530-0041 大阪府大阪市北区天神橋2丁目1-8
公式サイト:https://osakatemmangu.or.jp/
特徴的なユニークベニュー施設
東京や大阪以外にも特徴的なユニークベニューの施設が日本には存在します。日本が誇る最新技術や歴史ある建物でのユニークベニューは参加者を楽しませてくれるでしょう。
東海道新幹線
東京と新大阪間を運行する東海道新幹線の車両を、号車単位で貸し切ることが可能です。貸し切った車内では専用の車内放送が行えたり、オリジナルの背もたれカバーを設置できたりと趣向を凝らした演出ができます。
世界初の高速鉄道である東海道新幹線は日本の新幹線としても最古のものです。その輸送力は目を見張るものがあり、外国のゲストもきっと楽しめるイベントを行えるはずです。過去には「新幹線プロレス」というイベントが実施され、プロレスファンを喜ばせました。
施設名称:東海道新幹線
所在地:東京駅〜新大阪間
公式サイト:https://recommend.jr-central.co.jp/kashikiri/
岡山城
全国で唯一日本の城郭を貸し切れるのは岡山県にある岡山城です。そのライトアップされた姿は幽玄で美しく、来訪者を驚かせてくれるでしょう。最上階からは岡山の街を一望でき、広場ではレセプションや立食パーティーを行うことができます。外国の方には殿や侍の格好をしての記念撮影も人気です。令和4年には大改修が行われ、より一層ユニークベニューとして活用できる幅が広がっています。日本の魅力を最大限発信できるユニークベニュー施設の一つです。
施設名称:岡山城
所在地:〒700-0823 岡山県岡山市北区丸の内2-3-1
公式サイト:https://okayama-castle.jp/
京都二条城
京都の二条城は1603年に江戸幕府の初代将軍、徳川家康が天皇の守護と自身の上洛時の宿泊場所とするために築城されました。約400年にもわたり、徳川家の歴史を見つめてきた二条城でのイベントは非常に価値の高いものになるでしょう。
二の丸御殿の中庭での立食パーティーや、二の丸御殿台所での演奏会など、利用方法は多岐にわたります。日本のおもてなしを外国に感じてもらうのに最適な会場といえるでしょう。
施設名称:世界遺産元離宮二条城
所在地:〒604-8301 京都市中京区二条通堀川西入二条城町541
公式サイト:https://nijo-jocastle.city.kyoto.lg.jp/
まとめ
この記事ではユニークベニューの基本やその効果、各地域のユニークベニュー施設などを解説しました。
日本はまだまだユニークベニューの一般の認識は弱い状況ですが、歴史的背景が強い建造物は多く、活用できる施設はまだまだ多いはずです。
地域の活性化や、企業の活動のアピール、外国から注目されるきっかけになるなど、ユニークベニューはこれからの国際都市としての日本の在り方を示す良い例になっていくでしょう。
ぜひこの記事を参考にユニークベニューを行ってみてください。
30代男性ライター。ホテルに16年間勤務し、旅行業界に携わる。旅行代理店やホテルでの仕事を通じて旅行に興味を持ち、よく旅行に行っています。好きな都市は仙台と博多です。旅を通じて得た知識や日本の魅力を丁寧に伝えていきます。