しかし日本人であっても、その違いを正しく説明できる人は意外と少ないですよね。
神道と仏教、二つの異なる宗教の施設であり、それぞれに明確な定義がある神社とお寺。
この記事では、その歴史から始まり、具体的な違い、参拝方法に至るまで、違いを徹底解説していきます。
これを読めばあなたも、神社とお寺の違いを外国人の方に説明できるようになるはずです!
神社とお寺の違いとは?基本的な定義を解説
まず結論として、神社とお寺には明確な違いがあります。
神社とお寺はそれぞれに祀っているものが異なる=つまり、宗教が異なります。
神社は神道、お寺は仏教という異なる宗教施設であり、神社の場合は御神体を、お寺は仏像を祀っているという大きな違いがあるのです。
そのため、神社とお寺では見た目や参拝方法など細かい部分に、宗教ごとの細かな違いが見られます。
神社とお寺の違いについてさらに詳しく見ていきましょう。
神社とお寺の違い1.宗教の違い
神社が信仰しているのは、「神道」という日本古来の宗教です。
神道では「八百万(やおよろず)の神」といって、人や自然界の様々なものなど、神社により特定の神様を祀っています。
そのため、神社とは神様のいるところである、という定義が一般的です。
そしてお寺で信仰されているのが、「仏教」となります。
仏教はブッダ(釈迦)を開祖としており、古代インドより大陸を経由して日本に伝わったと考えられている宗教です。
仏教でいうお寺は本来、信者である僧侶が修行をする場所とされています。
そのため神様を祀る神社とは、信仰も目的も異なるのです。
神社とお寺の違い2.御朱印の違い
神社では一般的に「御朱印」として、その神社の印が押された紙が参拝者に与えられます。
これは参拝に訪れた証としての意味合いで使われているもので、名前の通り朱色の判子のようなものです。
御朱印は神社に限ったものではなく、お寺でも御朱印がもらえることがあります。
デザインに明確なルールがあるわけではないのですが、神社の御朱印は基本的にシンプルな傾向で神社名と日付や印のみということが多いです。
対してお寺の御朱印は、仏像や梵字、お寺のシンボルなどが描かれていることもあり、より複雑な印象のものが多くなっています。
神社とお寺の違い3.見た目の違い
神社とお寺は、建物の特徴にも違いがあります。
神社は入り口に大きな「鳥居」があるのが特徴的。神社は神様を祀っているので、神の世界と人間の世界を分け隔てるのが鳥居だとされています。
そして神様を祀っている「本殿」と、人間が参拝をする「拝殿」も別々に分かれていることが多いです。
参拝に向かう途中には手を清めるための「手水舎(ちょうずや)」があるのも、おなじみですね。これはお寺にもあるものです。
また神道では自然を崇拝することから、森が神社を取り巻くような立地になっていることも多いでしょう。
対してお寺の場合は、入り口にあるのは鳥居ではなく「山門」と呼ばれる門。
内部は大きく「伽藍(がらん)」と「僧房」に分かれていて、伽藍では仏像などが祀られる場所です。
そして僧房に僧侶が住むようになっています。
お寺では仏像や塔などが特徴的な建築物として目立ちます。また、お寺では庭園が整備されていることが多く、静寂な雰囲気が漂います。
神社とお寺の違い4.お賽銭や参拝方法の違い
神社とお寺では参拝方法も微妙に異なります。
まず神社参拝では、鳥居で一礼し参道に入ったら、手水舎で手と口を清めます。
そして拝殿でお賽銭を入れ、二礼二拍手一礼が基本的な作法です。
お寺の参拝では山門で一礼し、手水舎で手を清めるところまでは神社とほぼ同じ。
お寺では参道に線香を供える「常香炉」がある場合もあるので、その場合は線香の煙で身を清めます。
そして、お寺では手を合わせてお辞儀をすることが一般的で、拍手をすることはありません。
ここが神社と違うポイントですね。お賽銭については神社でもお寺でも同様に入れるものですが、その意味が実は異なります。
神社でのお賽銭は、神様への感謝を示すもの。対してお寺でのお賽銭はお布施として、参拝者が執着や欲を捨てる修行のひとつと考えられているのです。
神社とお寺の参拝方法
神社とお寺の参拝方法は微妙に異なり、また、「鳥居」や「山門」など似たように見えても建造物の意味も異なります。
神社とお寺の参拝方法について、それぞれ細かく確認しておきましょう。
神社の参拝方法
- 鳥居をくぐる前に一礼
- 手水舎で手と口を清める
- 本殿前で二礼二拍手一礼
神社もお寺も、参道を進み「手水舎で手と口を清める」ところまでは基本的に同様です。しかし「二礼二拍手一礼」の手法は、神社特有のものと覚えておきましょう。
お寺の参拝方法
- 山門をくぐる前に一礼
- 手水舎で手と口を清める
- 手を合わせ、ご本尊に向かってお辞儀
お寺の参道で「常香炉」がある場合は、煙で身を清めることも忘れずに。お寺で「二礼二拍手一礼」をしてしまうと恥ずかしい思いをすることになりかねませんので、外国人のお友達と参拝する場合などは特に注意しましょう。
手水の使い方
手水舎での手水の使い方は、大体看板などで書かれていることが多いです。ただ日本語のみの案内だと外国の方には読めず、使い方が理解できないことも。
正しい使い方を説明できるようになっておくと、観光客の方に聞かれた時にもスムーズに案内して挙げられますね。
手水舎では、左手に柄杓を持ち、右手を洗い、次に柄杓を右手に持ち替えて左手を洗います。その後、柄杓を持ったままの左手で口をすすぎ、最後に柄杓を立てて柄の部分を洗い流します。
神社の特徴と役割
神社、お寺のそれぞれにルーツやその意味、役割が違うことがわかりました。
それでは神社の特徴や役割について、さらに詳しく知っておきましょう。
御祭神と御神体
神社では、御祭神(祀られている神様)を中心に、神聖な物体である御神体を祀ります。御神体は自然物であることが多く、岩や山、川などがそれにあたります。
御神体は一般的に、外からは見えないところに祀られているものです。お寺の仏像が象徴として目に入る場所にあるのに対し、御神体は神聖なものとして参拝者からは見えないところにあるのです。
しかし御神体はその神社の大切な「神様」です。神社に参拝する時には、目に見えないとしても「神様にお参りにきた」という意識を忘れないようにしましょう。
神社で行われる祭事
神社では年間を通じて様々な祭事が行われます。これらはその神社によって個性もありますが、季節の変わり目や収穫を感謝するものから、地域の守り神を祀るものまで多岐にわたります。
例えば神社の代表的なお祭りである「大祭」は主にその神社の神様のご鎮座に関わるお祭りで、祈年祭、例祭、新嘗祭などと呼ばれるものがあります。
他にも、皇室を深い関わりがあるお祭りは「中祭」と呼ばれるなど、お祭りの種類によって区分も違います。
神社の結婚式(神前式)
神社で行わえれる儀式のひとつに、神前での結婚式もあります。
いわゆる「神前式」は、神社で行われる結婚式の形式の1つです。この式では、神社に祀られている神様の前で新郎新婦が誓いを立て、結婚を神に報告し、祝福を受けます。
白無垢や綿帽子などの和装の結婚式は日本特有の風景で、洋風の結婚式に比べ厳かで格調が高く感じられるものです。
お寺の特徴と役割
お寺の役割や行事などの特徴は、神社とは異なり仏教にもとづいたものになっています。
神社が御祭神や御神体を祀るのに対し、お寺では仏像が重要視されているのがポイントです。
仏像とご本尊
お寺には様々な仏像が安置されており、中でもご本尊はそのお寺における最も重要な仏像です。
仏像とはもともと、仏教の中で仏様を偶像化したものとされています。
本来は肉体を持たない仏様を、人間の目に見える形で偶像化しているのですね。
仏教信者はこの仏像に対して祈りを捧げ、心の平安を求めます。
お寺で行われる行事
お寺では、お盆や彼岸などの年中行事のほか、特定の仏教行事が行われます。
これらは先祖供養や、生活や人生の節目を祝うものが多いです。
除夜の鐘もお寺で行われる年中行事のひとつなので、日本人なら1度は参加したことのある方が多いのではないでしょうか。
お寺の宗派によっても行事の内容は異なるのですが、「修正会(しゅしょうえ)」のような新年を祝う行事や、お釈迦様の亡くなったとされる日に行う涅槃会(ねはんえ)は、多くのお寺で見られる代表的なものです。
お寺の結婚式(仏前式)
お寺でも神社のように、結婚式が行われることがあります。
これは「仏前式」と呼ばれ、新郎新婦が仏前で誓いを立て、結婚生活の幸福と繁栄を祈願するものです。
神社の結婚式が「神様の前で御加護を願う」名目であるのに対し、お寺での結婚式は「仏様に対し誓いを立てる」という目的で行われます。
お寺での結婚式は、新郎新婦どちらかがそのお寺の宗派であれば挙式可能です。
一般的な無宗教でもOKの結婚式場などとは違い、少なくともどちらかが仏教徒で、そのお寺の宗派を信仰している必要があります。
神社とお寺の歴史
神社とお寺は信仰も異なるだけに、その成り立ちや歴史に細かな違いがあります。
神社の歴史
神社は歴史を紐解いてみると、神道で信仰されていた特別な自然のあった土地であったり、神事のような儀式が行われていた土地が発祥だったりすることが多いようです。
神のいる特別な場所に神社が建てられ、神様が祀られて巫女さんや神主さんが今も神に仕えるお仕事をしています。
昔から日本には「八百万の神」という考えがあり、自然の中などあらゆるところに神が存在していると考えられていました。
そのようにして人間の生活の近くにあり常に支えてくれている存在として、神様を祀るようになったのです。
お寺の歴史
仏教の始まりは、紀元前500年頃まで遡ります。そのころインドで発祥した仏教は、中国や朝鮮半島を経由し6世紀に日本に伝来します。
その後、聖徳太子が一般に仏教を広めたことで、平安時代や奈良時代には沢山のお寺が建てられるようになったのです。
お寺を通し、仏教は日本の国家や民衆の間で広く受け入れられてきました。
お寺は仏教の普及とともに信仰の中心地として、また仏教に関する学問や文化の拠点として発展してきたのです。
神仏習合から神仏分離まで
日本では長い間、神道と仏教が融合した「神仏習合」の形態が見られました。
仏教が外国から入ってきても神道と明確に切り離すのではなく、当初は仏教と神道がどちらも受け入れられていたのです。
そのため一部の神社では、神社の中にお寺や仏具があるようなこともありました。
しかし、明治時代に入ると日本の近代化を進める目的で、政府による神仏分離令が発布されます。
これにより、神社とお寺は明確に分離されていくことになったのです。
神社とお寺の現代における役割
深い歴史のある神社とお寺ですが、現代においても私達の生活に浸透し、それぞれに役割を担っています。
時代とともに人々の認識も変化しているものの、どちらも日本の地域コミュニティにとって重要な存在であることには変わりありません。
現代社会でも、神社とお寺は日本人の精神生活において重要な役割を果たしています。
年中行事や人生の節目で訪れることで、心の平安を求めたり、感謝の気持ちを表したりする場となっているでしょう。
また、お寺と神社それぞれに異なる、現代での役割もあります。
現代社会におけるお寺の役割
お寺は本来宗教的な施設でもあり「壇家制度」のもとで運営されています。
壇家とはそのお寺を経済的に支援している家のことで、家単位でそのお寺に所属し専属で葬儀や法事などを行ってもらう仕組みです。
この壇家制度は現代でも存続されているので、お寺は壇家にとって宗教的な施設としての役割も果たしています。
また、それ以外にもお寺は地域の集会所やお祭りなどの行事の場として、町のコミュニティなどで親しまれていることも。
宗教を問わず、現代の地域社会においてもお寺は人をつなげる場としての役割を果たしています。
現代社会における神社の役割
普段特に信仰の強い人ではなくても、お正月には神社に初詣に行く方が日本人には多いのではないでしょうか。
神社は神様を祀っていることから、様々な御加護を求めて現代でも日常的に人々が訪れます。
日常の感謝を伝えにお参りする人もいれば、学業や仕事、縁結びなどの祈願で訪れる方もいるでしょう。
神社は現代においても気軽に神様とつながれる神聖な場所として、日本社会の中に浸透しています。
また、大きな神社はその土地のシンボルとして観光客を集めることもあり、観光ビジネスや地域住民の誇りとして、人々に貢献しているとも言えますね。
神社とお寺の違いを知り正しく参拝しよう
神社とお寺それぞれの由来や目的、特徴、参拝の仕方や歴史などを詳しく解説しました。
似ているように見える神社とお寺ですが、現代では明確に切り離されそれぞれに宗教的な背景や役割も異なることがわかります。
神社とお寺の違いを理解することは、日本の文化や歴史を深く知る第一歩とも言えます。
それぞれの歩んできた歴史や信仰を知ることで、これまでなんとなく訪れていた神社やお寺がより魅力的に映るのではないでしょうか。
神社とお寺の違いや正しい参拝方法を知り、尊敬の念を持って訪れることで、より日本文化を理解し豊かな時間を過ごすことができるでしょう。
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